そもそも退職代行とは、その名の通り「退職手続きを本人の代わりに行ってくれるサービス」。
依頼をすれば、もう上司や会社と直接やり取りすることなく、辞めたい意思を伝え、退職までの手続きを進めてくれます。

元々は弁護士事務所などが行うケースが中心でしたが、近年は民間の退職代行業者や労働組合系のサービスも登場し、手軽に利用できるようになりました。LINEひとつで即日対応もできるところがほとんどで、料金も3万円台からと利用しやすくなったのも利用者急増の理由のひとつです。

退職代行サービスの利用件数は、ここ数年で急増しています。
その背景には、働き方や社会意識の変化が関係しています。

・終身雇用崩壊と転職の一般化
かつての日本は、終身雇用が当たり前。
新卒で入った会社に定年まで勤め上げるのが「正しい生き方」とされていました。ですが、バブル崩壊後、終身雇用制度は崩壊。今では転職を繰り返しながらキャリアを築くスタイルが当たり前になり、会社にしがみつく必要性が薄れてきました。

・SNSの普及で情報が可視化された
以前なら「退職代行なんて聞いたこともない」という人がほとんどでしたが、今はX（旧Twitter）やInstagram、YouTubeなどで、退職代行を使った体験談があふれるように。「自分も頼んでみようかな」と思うハードルもぐっと下がりました。

・ハラスメント・ブラック企業の増加
2020年に施行されたパワハラ防止法で企業のコンプライアンス意識も高まりましたが、実態はまだ改善途上。特に中小企業や古い体質の会社では、今もなおパワハラ・モラハラが横行している職場も少なくありません。

「退職を申し出たら怒鳴られた」「辞めるなら損害賠償だと言われた」というケースも実際にある中で、心身を守る手段として退職代行が注目されるのも無理はありません。

ひとことで「退職代行」と言っても、実はサービスの提供元によって特徴やできること、料金体系が異なります。ここでは、大きく分けて3つのタイプについて、それぞれ詳しく解説していきます。

≪民間の退職代行業者≫
最も利用されているのが、この「民間の退職代行業者」と呼ばれるタイプです。株式会社や合同会社といった民間企業が運営しており、会社とのやり取りを利用者に代わって行ってくれるサービスです。

料金相場は3万円前後と比較的手軽で、LINEやメールのみで即日対応可能な業者が多いため、「今すぐ辞めたい」「会社に行くのが限界」という方にとって利用しやすいのが特徴です。

【できること】
・退職の意思を会社に伝える
・退職届の送付代行
・退職日や手続き方法の連絡

【できないこと】
・未払い残業代の請求
・有給休暇の取得交渉
・会社からの損害賠償請求への法的対応

法律上、民間の退職代行業者には交渉権限がありません。そのため、万が一トラブルになった場合、例えば「有給を全部消化させてほしい」「退職金が未払いだ」という状況でも、交渉自体を代行することができず、場合によっては自分で弁護士を立てなければならなくなります。

【メリット】
・料金が比較的安い
・即日対応、LINE相談OKの手軽さ
・24時間受付の業者も多い

【注意点】
・交渉が必要なケースでは限界がある
・悪質業者も存在するため、口コミや実績をしっかり確認することが大切

最近では「退職代行＋転職サポート」をセットにしている民間業者もあり、次の職探しも支援してくれるプランも人気です。

≪労働組合系の退職代行≫
次に紹介するのは「労働組合」が運営する退職代行サービスです。一般の民間業者とは異なり、労働組合法に基づく団体交渉権を持っているのが最大の特徴です。

この団体交渉権を活用することで、会社に対して以下のような法的に認められた交渉を行うことができます。

【できること】
・退職の意思の伝達
・有給休暇の消化交渉
・未払い賃金、残業代請求の交渉
・退職日や手続きの条件調整
・損害賠償請求をされた際の交渉

料金相場は2.5万円〜3.5万円程度と、民間業者とほぼ同水準。ただし、弁護士と違って法的代理権はないので、裁判や法的手続きを代理することはできません。

【メリット】
・有給取得や未払い賃金の交渉が可能
・民間業者並みの料金で利用できる
・トラブル時の対応力が高め

【注意点】
・労働組合への加入が必須（とはいえ、申し込みと同時に入会でき、退職後は脱退OKなところがほとんど）
・裁判沙汰になるような案件では、弁護士への依頼が必要

たとえば「退職したいけど有給も全部取りたい」「会社から高圧的な態度を取られている」という状況なら、民間より労働組合系の方が頼れる存在になるでしょう。

最近では、全国対応・即日退職可・24時間相談OKなど、民間と同様の利便性を備えた労働組合系も増えています。

≪弁護士による退職代行≫
最後に紹介するのは、法律のプロである弁護士による退職代行です。
これは他の2つとは異なり、弁護士が正式に依頼を受けて行うサービスのため、法的代理権と交渉権限を持っています。

【できること】
・退職の意思の伝達
・有給消化、残業代請求の交渉
・損害賠償請求の対応
・内容証明の送付
・労働審判や裁判手続きの代理

費用相場は5万円〜10万円程度と他より高額ですが、法的トラブルの可能性が高い場合や、ブラック企業相手に揉めることが予想される場合には、唯一安心して任せられる選択肢です。

【メリット】
・すべての法的対応が可能
・未払い賃金請求も代行できる
・裁判沙汰になってもそのまま対応を依頼できる

【注意点】
・料金が高め
・即日退職に対応していない場合もある（ただし、相談次第で早期対応可能な場合も）

たとえば「会社から損害賠償を請求されそう」「辞めるなら内容証明を送る必要がある」「未払い残業代を確実に請求したい」といったケースでは、最初から弁護士に依頼するのがおすすめです。

最近は退職代行に特化した弁護士事務所も増えており、LINE相談や即日対応を行う法律事務所も登場しています。

退職代行にはこのように3種類あり、それぞれ料金・対応範囲・安心感が異なります。
しっかりと信用できる業者か見極めるためにレビューを調べてみてください！

実際に利用した人の声をもとに、退職代行のメリット・デメリットをまとめました。

【メリット】

・精神的ストレスから即解放
上司に辞めると言えず、ストレスで体調を崩す人も少なくありません。退職代行なら、依頼した瞬間から会社に行かずに済み、会社との連絡もすべて代行してもらえます。

「朝、目が覚めたときの気持ちが違った」「胃痛がなくなった」という声も多いです。

・即日退職もOK
多くの退職代行は即日対応。その日から出社しなくて済むので、ブラック職場で追い詰められている人には大きな救い。

・面倒な手続きを丸投げ
上司への連絡、退職届の提出、私物の受け取り、制服や備品の返却方法もすべて代行。会社からの電話やLINEも拒否してOK。

心身の限界を超えているときに、ありがたい存在です。

【デメリット】
一方で、デメリットも存在します。

・費用負担
一般的に3万〜10万円と安くはありません。
特に貯金が少ない場合、この出費は痛いと感じるかもしれません。

ただ、弁護士型なら未払い残業代の請求も可能なため、結果的に元が取れるケースもあります。

・自分でけじめをつけられない
「社会人なんだから、自分の口で言うべき」という声も根強いです。
次の転職先で理由を説明する場面で、言いづらいと感じることもあります。

最近は理解のある企業も増えつつありますが、まだ偏見がゼロとは言えません。

・悪質業者の存在
「安さ」を売りにしている業者の中には、会社に連絡を入れず放置したり、トラブルを放置する悪質な業者も存在。
しっかり実績・口コミを確認することが大切です。

実際に退職代行を使った人たちの声を紹介します。

Aさん（27歳・男性）
「パワハラ上司が怖すぎて言い出せず、LINEで代行を依頼。翌朝には退職届を提出してもらい、その日から出社不要に。もっと早く頼めばよかった」

Bさん（32歳・女性）
「親に反対されたけど、心を壊す前に辞めた。今は転職して穏やかな職場に。自分の人生、自分で守らないとダメ」

Cさん（24歳・男性）
「安さで適当な業者に頼んで失敗。連絡ミスで会社が大騒ぎに。信頼できるところに頼むべきだったと後悔」

私自身、かつて「退職代行って逃げじゃないの？」と思っていました。でも、「退職を申し出たら机を蹴られた」「家族にまで嫌がらせが来た」なんて話を聞き、今は180度考えが変わりました。

命を守る行動を、他人がとやかく言うべきではない。利用するもしないも自由。ただ、こういう選択肢があると知るだけで、心が少し楽になる人もいるはずです。

退職代行は決して逃げではなく、自分の命と心を守る手段。

【結論】
✔ 精神的限界なら迷わず利用を検討
✔ 悪質業者には要注意
✔ 費用とサポート内容をしっかり比較
✔ 自分の人生を守る行動に遠慮はいらない

正社員として働いていると、責任の重さや人間関係、長時間労働に疲れてしまうこともありますよね。もし今の働き方にしんどさを感じているなら、思い切って派遣という働き方を検討してみるのもひとつの方法です。

派遣なら、万が一職場が合わなかったり辞めたいと思ったときも、退職代行を使わずに、派遣会社の営業担当に相談すればOK。就業先とのやり取りも営業担当が間に入ってくれるので、トラブルになることもほとんどありません。しかも、次の仕事探しまでしっかりサポートしてもらえるので、働きながら安心して次のステップを考えられます。

正社員だけが働き方の正解じゃないし、しんどいときは無理せず、自分に合った働き方を選んでいいんです。疲れた心と体を休めながら、自分らしく働ける道を探してみてはいかがでしょうか。

もし今、心が壊れそうなほど辛いなら、無理せず相談だけでもしてみてください。