ビームス 安藤 賀一さんに聞く『アパレル業界の今と未来』
インタビュー
2024.12.23
411 Views
東京・原宿から始まり、世界中のファッション愛好家に愛される存在となったBEAMS。ファッションだけでなく、カルチャーやライフスタイルの提案を通じて、常に時代の先端を走り続ける日本を代表するセレクトショップです。いつだってBEAMSが描くファッションの未来は明るく、そこに関わる全ての人がHAPPYを感じてきました。そんなビームスを長年支え続けてこられた安藤さんは、アパレル・ファッションの未来をどのように考え、デザインしているのでしょうか?今回のインタビューでは、時代と共に変化し続けるアパレル業界について、今年で在籍25年目を迎えられる安藤 賀一さんにお話を伺いました。
アパレルとの出会い
●アパレル業界に進まれたきっかけは?
もちろん洋服が好きですし、接客が好きだった事が前提ですが、正直なところ、当時は女性にモテたいという不純な動機も少しだけありました(笑)。ただ、それも裏を返せば、自分を磨ける業界なんじゃないかと思ったんですよね。それで迷いなく、洋服に関わる仕事を選びました。
私が最初に働き始めたのは、二子玉川の高島屋にあるビームス。少し変わった店舗で、当時は地下1階の食料品売り場の隣という、なかなか珍しい立地にありました。洋服だけじゃなくて、家具や雑貨なども扱うお店だったんですが、ビームスを目指して来てくださるお客様が本当に多かったです。話題の商品が発売されると、開店時間に合わせて走ってくるお客様もいて、ビームスの扱う商品に対する注目の高さを日々実感していました。
そういったお客様から頂く、『また来たい!』とか『お店やスタッフがかっこいい!』などといったお褒めの言葉が嬉しくて。アパレルの仕事が、お客様に喜びや楽しさを伝えられる仕事なのだと知りました。そんな経験を通じて、『この仕事をもっと続けていきたい』と強く思うようになったんです。
●最初にぶつかった壁は?
当時、ビームスにはアルバイトで入ること自体がすごく難しかったんです。アパレル業界って今とは少し状況が違っていて、本当に憧れの職業でした。実際、私もアルバイトの採用試験には3回落ちていて、その後の社員試験でも4回不合格。それだけ人気があったんですよね。
実は、当時アルバイト面接で私を落とした面接官が、今の上司!(笑)。ものすごく面白い縁だなと感じています。でも、何度落とされたってそれでもビームスにはいりたいと思えたのは、アパレルで働きたいという想い、そしてビームスという存在に強く惹かれるものがあったからなんでしょうね。
●あきらめなかった先に待っていたものは?
社員試験に落ちるたび、かなり落ち込みました。でも、その都度『自分に足りないものは何だろう』って考えるきっかけができたんです。振り返ってみると、洋服は好きだけど、自分の周りにはもっとおしゃれで知識豊富なスタッフがたくさんいて、そういった人達と同じ土俵で勝負をするのは難しいんじゃないかと感じていました。そこで、改めて自分の武器が何かを考えるようになったんです。自分がアピールすべきは、やっぱり接客力なんじゃないかと気づいた瞬間でもありました。
ただ、接客のスキルって数値で表しにくい部分があって。どうやって評価してもらうかが課題でした。その中で、『ベスト販売員』というタイトルを取れたのは大きかったですね!当時、優れた接客を行う販売員に与えられるこの賞を、アルバイトの自分が得られたことは、社員試験合格の決め手になったんじゃないかなと思っています。
接客を通じて会社に貢献したいという思いが形になったことは自信にも繋がりましたし、人と接する楽しさを改めて実感できた時間は、今でも自分の財産になっています。
●どんな時に成長を感じてきましたか?
『やっぱり接客ってマニュアル通りではないんだな』って。経験を重ねていくうちに気づいたことがとても大きかったです。お客様はマニュアル通りの対応を求めているわけじゃなく、重要なのはその人に合った接し方なんだと感じてからは、よりお客様との関係性を構築できるようになりました。友達ではないけど、友達に近いような。でも、ちゃんとした距離感のある心地よい関係を築くことができるようになったのは、相手に合わせた接し方や話し方が少しずつ身についてきてからだと思います。
次第に相手が何を求めているのかを見抜く力、いわゆる洞察力も少しずつ養われて、お客様とのやり取りの中で、『この方にはこういうご案内が正解だな』って直感的に分かるようになってきたのは、自分の成長を実感した部分ですね。
こういったスキルを身につけるには、いろんなお客様やスタッフと会話をしたり接したりする経験がとても大事なんだなと思います。そんな経験の積み重ねが、自分を成長させてくれました。
●現在の部署ではどのようなお仕事をされていますか?
カスタマーエンゲージメント本部ストアディベロップメント部という部署に配属されています。主に店舗の開発がメインタスクとなる部署なんですが、課が2つに分かれていて、1つはストアプランニング課。こちらは新規出店や既存店舗の契約更新、ディベロッパー様との交渉などを行っています。もう1つはパートナーリレーション課で、販売代行のオーナー様やスタッフの皆さんとコミュニケーションを深めながら、店舗運営に関わる課題解決や契約関連の対応をしています。パートナー同士が協力し、課題を解消していく。そんなイメージを持っていただければと思います。当然現場も大事にしていますので、店頭に立って販売応援することもあります。スタッフブリッジさんとも販売代行のお取引がありますが、かれこれ9年…、いや、10年目?!御社の失敗を恐れずにやってみようという精神は、ビームスとも通じる部分があり、販売代行の枠にとどまらず、さまざまな道に挑戦する企業風土がとても印象的です。長いお付き合いになりましたね(笑)。
もちろん洋服が好きですし、接客が好きだった事が前提ですが、正直なところ、当時は女性にモテたいという不純な動機も少しだけありました(笑)。ただ、それも裏を返せば、自分を磨ける業界なんじゃないかと思ったんですよね。それで迷いなく、洋服に関わる仕事を選びました。
私が最初に働き始めたのは、二子玉川の高島屋にあるビームス。少し変わった店舗で、当時は地下1階の食料品売り場の隣という、なかなか珍しい立地にありました。洋服だけじゃなくて、家具や雑貨なども扱うお店だったんですが、ビームスを目指して来てくださるお客様が本当に多かったです。話題の商品が発売されると、開店時間に合わせて走ってくるお客様もいて、ビームスの扱う商品に対する注目の高さを日々実感していました。
そういったお客様から頂く、『また来たい!』とか『お店やスタッフがかっこいい!』などといったお褒めの言葉が嬉しくて。アパレルの仕事が、お客様に喜びや楽しさを伝えられる仕事なのだと知りました。そんな経験を通じて、『この仕事をもっと続けていきたい』と強く思うようになったんです。
●最初にぶつかった壁は?
当時、ビームスにはアルバイトで入ること自体がすごく難しかったんです。アパレル業界って今とは少し状況が違っていて、本当に憧れの職業でした。実際、私もアルバイトの採用試験には3回落ちていて、その後の社員試験でも4回不合格。それだけ人気があったんですよね。
実は、当時アルバイト面接で私を落とした面接官が、今の上司!(笑)。ものすごく面白い縁だなと感じています。でも、何度落とされたってそれでもビームスにはいりたいと思えたのは、アパレルで働きたいという想い、そしてビームスという存在に強く惹かれるものがあったからなんでしょうね。
●あきらめなかった先に待っていたものは?
社員試験に落ちるたび、かなり落ち込みました。でも、その都度『自分に足りないものは何だろう』って考えるきっかけができたんです。振り返ってみると、洋服は好きだけど、自分の周りにはもっとおしゃれで知識豊富なスタッフがたくさんいて、そういった人達と同じ土俵で勝負をするのは難しいんじゃないかと感じていました。そこで、改めて自分の武器が何かを考えるようになったんです。自分がアピールすべきは、やっぱり接客力なんじゃないかと気づいた瞬間でもありました。
ただ、接客のスキルって数値で表しにくい部分があって。どうやって評価してもらうかが課題でした。その中で、『ベスト販売員』というタイトルを取れたのは大きかったですね!当時、優れた接客を行う販売員に与えられるこの賞を、アルバイトの自分が得られたことは、社員試験合格の決め手になったんじゃないかなと思っています。
接客を通じて会社に貢献したいという思いが形になったことは自信にも繋がりましたし、人と接する楽しさを改めて実感できた時間は、今でも自分の財産になっています。
●どんな時に成長を感じてきましたか?
『やっぱり接客ってマニュアル通りではないんだな』って。経験を重ねていくうちに気づいたことがとても大きかったです。お客様はマニュアル通りの対応を求めているわけじゃなく、重要なのはその人に合った接し方なんだと感じてからは、よりお客様との関係性を構築できるようになりました。友達ではないけど、友達に近いような。でも、ちゃんとした距離感のある心地よい関係を築くことができるようになったのは、相手に合わせた接し方や話し方が少しずつ身についてきてからだと思います。
次第に相手が何を求めているのかを見抜く力、いわゆる洞察力も少しずつ養われて、お客様とのやり取りの中で、『この方にはこういうご案内が正解だな』って直感的に分かるようになってきたのは、自分の成長を実感した部分ですね。
こういったスキルを身につけるには、いろんなお客様やスタッフと会話をしたり接したりする経験がとても大事なんだなと思います。そんな経験の積み重ねが、自分を成長させてくれました。
●現在の部署ではどのようなお仕事をされていますか?
カスタマーエンゲージメント本部ストアディベロップメント部という部署に配属されています。主に店舗の開発がメインタスクとなる部署なんですが、課が2つに分かれていて、1つはストアプランニング課。こちらは新規出店や既存店舗の契約更新、ディベロッパー様との交渉などを行っています。もう1つはパートナーリレーション課で、販売代行のオーナー様やスタッフの皆さんとコミュニケーションを深めながら、店舗運営に関わる課題解決や契約関連の対応をしています。パートナー同士が協力し、課題を解消していく。そんなイメージを持っていただければと思います。当然現場も大事にしていますので、店頭に立って販売応援することもあります。スタッフブリッジさんとも販売代行のお取引がありますが、かれこれ9年…、いや、10年目?!御社の失敗を恐れずにやってみようという精神は、ビームスとも通じる部分があり、販売代行の枠にとどまらず、さまざまな道に挑戦する企業風土がとても印象的です。長いお付き合いになりましたね(笑)。
この業界に魅了され続ける背景
●やりがいや楽しさを感じるポイント
今、ビームスで働いていて感じているやりがいや楽しさは、面白い人が多いというところ。経営陣をはじめ、社内には本当に個性的な人が多くいますが、それが化学反応を生んで、日々面白いことが起きているという実感があります。
社長の設楽がよく言うんですけど、ビームスのスタッフは動物園のように個性が豊かで、そのぶつかり合いの中から新しい発想やアイデアが生まれると。お客様にも支えられながら、そんな様々な特徴を持ったスタッフと一緒に働けることが、自分にとってのやりがいになっています。
また、18年間在籍したアウトレット部にも本当に多才な人が多かったです。その人たちと接することで自分自身にも新しい気づきがあり、「自分も頑張らなくては」と思わせてもらっています。周りには刺激的な人たちがたくさんいて、そんな環境に身を置けていることをとてもありがたいと感じています。
●店頭で感じられるアパレルの魅力
他の業種ではなかなか体験できないような、多種多様な人々と接することができるのが魅力だと感じています。例えば、ビジネスマンや自営業の方もいれば、初めて洋服を買う学生や子どもを連れた主婦の方々など、幅広いお客様とコミュニケーションを取ることができるんですよね。お客様と直接話す場があることで、アパレルにおける仕事の意義を感じることができるんです。
また、地方に行くことも多かったので、地域ごとの文化や土地の違いに触れることができました。関東に住んでいた私が大阪梅田の店舗で働いていた時には、土地ごとの文化の違いに衝撃を受け、良い意味で関西の洗礼を受けました(笑)。どこに行っても、お客様一人ひとりが違うニーズを持っているということを実感し、その土地土地での仕事の面白さを感じています。
●販売員に必要なスキル
自分をどう表現するかが大事なんだと思っています。それはスタイリングだけでなく、お客様との会話にも当てはまります。やっぱり、自分を偽っていると、相手にはすぐにバレてしまうんですよね。結局は自分自身がどういう人間かを見せることが大切です。私たちの業界では、それをスタイリングや接客を通じて表現していくことが重要だと思っています。
嘘や背伸びをしているスタイリングや接し方って、結局お客様には受け入れられないんじゃないかなって。マニュアル通りの接客も同様に、世代を問わずあまり効果的ではないと思います。だからこそ、自分をどう表現するか、そこが本当に大事なポイントなんです。
私も実際に、背伸びをしすぎて失敗した経験がありました。その時、伝えたい事が全然伝わらなかったなと感じたんです。結局、伝え方というのは人それぞれですが、私の中での判断基準は相手が行動を変えたかどうか!お客様に伝えたことによって、相手の気持ちや行動が変わったと感じたら、それが「伝わった」ということなんだと思っています。
部下に対してもお客様に対しても、行動の変化が見られたかどうか。それが一番の基準だと、日々答え合わせをしながら自分自身の成長に繋げていく。そんな風にして仕事をしているつもりです。できているかは分かりませんが、心がけていることは間違いありません。
●今の自分を支えるもの
これまで、全国各地のアウトレットを管理してきた経験があります。沖縄から北海道まで様々な地域で店舗を見てきましたが、そこで得た経験を通じて、地域ごとに異なるマーケットの特性を理解することができました。それぞれの土地には独自のニーズがあり、どのようなお客様が何を求めているのかを分析することが非常に大切です。私は実際に足を運んだり、データを活用してそのニーズを把握してきましたので、今の部署でも役立つ経験があると確信しています。
また、同時に長年店舗管理をしてきた中で築いてきたチームやスタッフとの信頼関係が自分の強みになりました。みんなの性格や目標も理解しているからこそ、そのスタッフがどうすれば目標を実現できるかをサポートすることにやりがいを感じます。スタッフがどんな気持ちで働いているのかを理解することができるので、彼らがやりたいことを実現できるようにお手伝いするのが今の自分のモチベーション。実際に、スタッフがお客様と真剣に向き合っている姿を見ると私も頑張らなくてはと感じますし、店舗に行くことで元気をもらえることが多いです。もらった元気を何かの形で還元したいという気持ちで、今後も店舗に携わっていきたいと思っています。
今、ビームスで働いていて感じているやりがいや楽しさは、面白い人が多いというところ。経営陣をはじめ、社内には本当に個性的な人が多くいますが、それが化学反応を生んで、日々面白いことが起きているという実感があります。
社長の設楽がよく言うんですけど、ビームスのスタッフは動物園のように個性が豊かで、そのぶつかり合いの中から新しい発想やアイデアが生まれると。お客様にも支えられながら、そんな様々な特徴を持ったスタッフと一緒に働けることが、自分にとってのやりがいになっています。
また、18年間在籍したアウトレット部にも本当に多才な人が多かったです。その人たちと接することで自分自身にも新しい気づきがあり、「自分も頑張らなくては」と思わせてもらっています。周りには刺激的な人たちがたくさんいて、そんな環境に身を置けていることをとてもありがたいと感じています。
●店頭で感じられるアパレルの魅力
他の業種ではなかなか体験できないような、多種多様な人々と接することができるのが魅力だと感じています。例えば、ビジネスマンや自営業の方もいれば、初めて洋服を買う学生や子どもを連れた主婦の方々など、幅広いお客様とコミュニケーションを取ることができるんですよね。お客様と直接話す場があることで、アパレルにおける仕事の意義を感じることができるんです。
また、地方に行くことも多かったので、地域ごとの文化や土地の違いに触れることができました。関東に住んでいた私が大阪梅田の店舗で働いていた時には、土地ごとの文化の違いに衝撃を受け、良い意味で関西の洗礼を受けました(笑)。どこに行っても、お客様一人ひとりが違うニーズを持っているということを実感し、その土地土地での仕事の面白さを感じています。
●販売員に必要なスキル
自分をどう表現するかが大事なんだと思っています。それはスタイリングだけでなく、お客様との会話にも当てはまります。やっぱり、自分を偽っていると、相手にはすぐにバレてしまうんですよね。結局は自分自身がどういう人間かを見せることが大切です。私たちの業界では、それをスタイリングや接客を通じて表現していくことが重要だと思っています。
嘘や背伸びをしているスタイリングや接し方って、結局お客様には受け入れられないんじゃないかなって。マニュアル通りの接客も同様に、世代を問わずあまり効果的ではないと思います。だからこそ、自分をどう表現するか、そこが本当に大事なポイントなんです。
私も実際に、背伸びをしすぎて失敗した経験がありました。その時、伝えたい事が全然伝わらなかったなと感じたんです。結局、伝え方というのは人それぞれですが、私の中での判断基準は相手が行動を変えたかどうか!お客様に伝えたことによって、相手の気持ちや行動が変わったと感じたら、それが「伝わった」ということなんだと思っています。
部下に対してもお客様に対しても、行動の変化が見られたかどうか。それが一番の基準だと、日々答え合わせをしながら自分自身の成長に繋げていく。そんな風にして仕事をしているつもりです。できているかは分かりませんが、心がけていることは間違いありません。
●今の自分を支えるもの
これまで、全国各地のアウトレットを管理してきた経験があります。沖縄から北海道まで様々な地域で店舗を見てきましたが、そこで得た経験を通じて、地域ごとに異なるマーケットの特性を理解することができました。それぞれの土地には独自のニーズがあり、どのようなお客様が何を求めているのかを分析することが非常に大切です。私は実際に足を運んだり、データを活用してそのニーズを把握してきましたので、今の部署でも役立つ経験があると確信しています。
また、同時に長年店舗管理をしてきた中で築いてきたチームやスタッフとの信頼関係が自分の強みになりました。みんなの性格や目標も理解しているからこそ、そのスタッフがどうすれば目標を実現できるかをサポートすることにやりがいを感じます。スタッフがどんな気持ちで働いているのかを理解することができるので、彼らがやりたいことを実現できるようにお手伝いするのが今の自分のモチベーション。実際に、スタッフがお客様と真剣に向き合っている姿を見ると私も頑張らなくてはと感じますし、店舗に行くことで元気をもらえることが多いです。もらった元気を何かの形で還元したいという気持ちで、今後も店舗に携わっていきたいと思っています。
リアル店舗にしかない価値
●店頭販売の価値とは
この10年間で、販売環境には大きな変化がありました。最近ですと、採用難やコロナ後の働き方改革など、時代の流れに伴い販売の在り方が変わっています。学生の方が親御さんに反対されて、販売員として働くことに対して不安を感じることもありますし、在宅勤務やフレックス勤務が普及する中で、販売という仕事への考え方も変わってきたのが事実です。
でも、そんな時代の変化の中でも、本質的な部分は変わっていないと思っています。つまりそれは、お客様に心から喜んでもらいたい、役に立ちたいという気持ちです。これは10年前も今も、そしてこれからも変わらない部分だと信じています。私自身、未来を予測することはできませんが、未来のためにもまずは今できること、そして本質的な部分を大切にすることが大事だと思っています。
店頭には、eコマースといった新しい業務が増えてきましたが、販売員がお客様と直接対面して接する部分は、今も昔も変わっていません。ビームスに足を運んでくれるお客様との出会いや、たまたまお店に入ってきたお客様とのご縁を大切にしたいという気持ちはどんな時代でも変わらないはずです。
だからこそ、「お客様に心から喜んでもらいたい」、「役に立ちたい」というマインドを大切にしていけば、時代に合った答えが必ず見つかるはずですし、リアル店舗でしか提供できない価値を見出せると思っています。
●店頭とECの差別化は必要か
実際に数字を見てみると、ECでのみ買うお客様よりも、ECと実店舗を行き来しているお客様が圧倒的に多いんです。そのため、ECと店舗を別々に考えるとか、境界線を設ける必要はないと思っています。今の時代、便利なECをうまく活用するべきだとも思いますし、インターネットを通じて自分たちのスタイリングや商品の良さを伝える機会が増えているのは、非常に時代に合っていることだと思っています。やらなければならないことでもありますし、使えるものはどんどん使うべきですよね。
とはいえ、お客様には様々な買い物の仕方があるので、どんな方法で購入してもそのブランドの価値を提供できるようにすることが大切だと感じています。私は実際、ECはあまり得意ではないんですが、若い世代の方々はECをうまく活用しています。でも、学生にインタビューをする機会があり、そのときに感じたのは、例えばECサイトで気になる商品を見つけても、やっぱり実際に店舗に行って商品を確認したいという声が多かったことです。失敗したくないという気持ちが強いんですね。
そういった背景から、ECと実店舗がどちらも大事だということが分かります。ECも実店舗も同じように重要で、どちらも疎かにはできません。お客様が両方をうまく行き来できるような動線を作ることがこれからの課題だと思いますし、それがすごく大切なことだなと感じています。
●アウトレット業界の変化
現在のアウトレットは成熟期に入っていると感じています。成長期は終わり、出店の余白も少なくなってきました。私が2008年頃からビームスのアウトレットの出店を見てきた中で、成長期は確かに加速していましたが、現在はそのピークを過ぎて、どう既存のお店を活性化させるかに注力しなければならない時期に入ったと思います。
また、長くアウトレット事業に関わってきて、個人的に感じているのは、出店が地域の町おこしにも関わっているということです。例えば、酒々井やふかや花園など、何もない土地に商業施設を作ることで経済が回り、雇用が生まれ、道ができるなど、地域と連携した取り組みが進んでいく。アウトレットが地域に与える影響は大きく、その中でビームスも成長してきたと感じています。今後は、どう既存の店舗でお客様に何度も足を運んでもらえるかが大切なテーマです。特に地元のお客様にどう楽しんでもらい、再度来店していただけるか、そういった部分が重要になってきます。もちろん、品揃えやスタッフとのコミュニケーションは大切ですが、リアル店舗でビームスの価値をどれだけ伝えられるかが今後のポイントです。
ビームスの社内には「成功したら、ヒーロー。失敗しても、チャレンジャー。」という言葉があり、このマインドが社風を形作っていると感じます。スキルだけでなく、価値を創出するための挑戦を楽しむ姿勢が大切です。
●どんな販売員が必要とされていきますか?
ちょっと話がずれるかもしれませんが、『努力は夢中に勝てない』という社長である設楽の言葉に、私はとても共感しています。これは夢中が努力に勝るという意味ではなく、夢中をともなう努力はその質と量で一般的な努力を上回るという意味だと私は解釈しています。つまり、努力を努力と思ってやっている時点で、先が見えてしまうんです。だから、私はとにかく夢中になって、楽しく働くことが一番大切だと思っています。
好きなことや楽しいことに夢中になって取り組むことが、持続的な成長に繋がると思っているんです。スタッフにも、純粋な気持ちで仕事に取り組んでほしい。それが結果的に、いい販売員として成長するための一つの方法だと考えています。もちろん正解はありませんが、シンプルに、純粋に考えることが、今の販売業には必要なことなんです。
大変なこともありますが、やっぱりアパレル業界は魅力的で楽しい。20年以上関わってきて、今振り返るとこの業界に入って本当に良かったと感じています。何度も言いますが、販売員という職種は、多種多様な方々とファッションに関わるヒト、モノ、コト、ハコを通じて会話を重ねる機会が非常に多い職業です。それは、他の職種にはない魅力で、いろんな考え方を吸収できる場でもあります。コミュニケーションが広がる環境の中で自分自身が成長し、その成長がアパレル業界の発展にも寄与するとてもやりがいのある仕事だと思っています。
この10年間で、販売環境には大きな変化がありました。最近ですと、採用難やコロナ後の働き方改革など、時代の流れに伴い販売の在り方が変わっています。学生の方が親御さんに反対されて、販売員として働くことに対して不安を感じることもありますし、在宅勤務やフレックス勤務が普及する中で、販売という仕事への考え方も変わってきたのが事実です。
でも、そんな時代の変化の中でも、本質的な部分は変わっていないと思っています。つまりそれは、お客様に心から喜んでもらいたい、役に立ちたいという気持ちです。これは10年前も今も、そしてこれからも変わらない部分だと信じています。私自身、未来を予測することはできませんが、未来のためにもまずは今できること、そして本質的な部分を大切にすることが大事だと思っています。
店頭には、eコマースといった新しい業務が増えてきましたが、販売員がお客様と直接対面して接する部分は、今も昔も変わっていません。ビームスに足を運んでくれるお客様との出会いや、たまたまお店に入ってきたお客様とのご縁を大切にしたいという気持ちはどんな時代でも変わらないはずです。
だからこそ、「お客様に心から喜んでもらいたい」、「役に立ちたい」というマインドを大切にしていけば、時代に合った答えが必ず見つかるはずですし、リアル店舗でしか提供できない価値を見出せると思っています。
●店頭とECの差別化は必要か
実際に数字を見てみると、ECでのみ買うお客様よりも、ECと実店舗を行き来しているお客様が圧倒的に多いんです。そのため、ECと店舗を別々に考えるとか、境界線を設ける必要はないと思っています。今の時代、便利なECをうまく活用するべきだとも思いますし、インターネットを通じて自分たちのスタイリングや商品の良さを伝える機会が増えているのは、非常に時代に合っていることだと思っています。やらなければならないことでもありますし、使えるものはどんどん使うべきですよね。
とはいえ、お客様には様々な買い物の仕方があるので、どんな方法で購入してもそのブランドの価値を提供できるようにすることが大切だと感じています。私は実際、ECはあまり得意ではないんですが、若い世代の方々はECをうまく活用しています。でも、学生にインタビューをする機会があり、そのときに感じたのは、例えばECサイトで気になる商品を見つけても、やっぱり実際に店舗に行って商品を確認したいという声が多かったことです。失敗したくないという気持ちが強いんですね。
そういった背景から、ECと実店舗がどちらも大事だということが分かります。ECも実店舗も同じように重要で、どちらも疎かにはできません。お客様が両方をうまく行き来できるような動線を作ることがこれからの課題だと思いますし、それがすごく大切なことだなと感じています。
●アウトレット業界の変化
現在のアウトレットは成熟期に入っていると感じています。成長期は終わり、出店の余白も少なくなってきました。私が2008年頃からビームスのアウトレットの出店を見てきた中で、成長期は確かに加速していましたが、現在はそのピークを過ぎて、どう既存のお店を活性化させるかに注力しなければならない時期に入ったと思います。
また、長くアウトレット事業に関わってきて、個人的に感じているのは、出店が地域の町おこしにも関わっているということです。例えば、酒々井やふかや花園など、何もない土地に商業施設を作ることで経済が回り、雇用が生まれ、道ができるなど、地域と連携した取り組みが進んでいく。アウトレットが地域に与える影響は大きく、その中でビームスも成長してきたと感じています。今後は、どう既存の店舗でお客様に何度も足を運んでもらえるかが大切なテーマです。特に地元のお客様にどう楽しんでもらい、再度来店していただけるか、そういった部分が重要になってきます。もちろん、品揃えやスタッフとのコミュニケーションは大切ですが、リアル店舗でビームスの価値をどれだけ伝えられるかが今後のポイントです。
ビームスの社内には「成功したら、ヒーロー。失敗しても、チャレンジャー。」という言葉があり、このマインドが社風を形作っていると感じます。スキルだけでなく、価値を創出するための挑戦を楽しむ姿勢が大切です。
●どんな販売員が必要とされていきますか?
ちょっと話がずれるかもしれませんが、『努力は夢中に勝てない』という社長である設楽の言葉に、私はとても共感しています。これは夢中が努力に勝るという意味ではなく、夢中をともなう努力はその質と量で一般的な努力を上回るという意味だと私は解釈しています。つまり、努力を努力と思ってやっている時点で、先が見えてしまうんです。だから、私はとにかく夢中になって、楽しく働くことが一番大切だと思っています。
好きなことや楽しいことに夢中になって取り組むことが、持続的な成長に繋がると思っているんです。スタッフにも、純粋な気持ちで仕事に取り組んでほしい。それが結果的に、いい販売員として成長するための一つの方法だと考えています。もちろん正解はありませんが、シンプルに、純粋に考えることが、今の販売業には必要なことなんです。
大変なこともありますが、やっぱりアパレル業界は魅力的で楽しい。20年以上関わってきて、今振り返るとこの業界に入って本当に良かったと感じています。何度も言いますが、販売員という職種は、多種多様な方々とファッションに関わるヒト、モノ、コト、ハコを通じて会話を重ねる機会が非常に多い職業です。それは、他の職種にはない魅力で、いろんな考え方を吸収できる場でもあります。コミュニケーションが広がる環境の中で自分自身が成長し、その成長がアパレル業界の発展にも寄与するとてもやりがいのある仕事だと思っています。
ON/OFFのスイッチ
●どのようにリフレッシュしてますか?
実は、趣味で毎週野球をやっています。私にとって、仕事と家庭以外のもう1つの居場所、いわゆる“サードプレイス”。野球を通じて全く違う業種の人たちと交流したり、全然知らない人とも仲良くなれたりするのが楽しくて。今は高校を卒業したばかりの若い子たちとも一緒にプレーをしています。目が悪くなったり膝が痛くなったりして、ヒアルロン酸の注射を打ちながら、48歳の自分が18歳の子たちとスポーツを頑張ってます(笑)。当社のお店のスタッフと同様に、若い子たちからパワーをもらいますし、彼らの将来の話を聞いて親目線になったりすることもありますね。
それでも、野球だけでは足りないと思い始めて、先日息子がやっているバドミントンにも挑戦してみたんです。これがまた楽しくて。動体視力や俊敏性を鍛えられるので、自分にとって新しい刺激になっています。土曜日は野球、日曜日はバドミントンと、体を動かす週末を過ごしています。
仕事から完全に切り離された趣味を持つことで、気持ちがスッキリしますし、1週間のリフレッシュにもなっています。私にとって、こういう別の世界に身を置くことがとても大切なんです。こんなに動いていても痩せないのは食生活のせいだと思いますけど(笑)。
実は、趣味で毎週野球をやっています。私にとって、仕事と家庭以外のもう1つの居場所、いわゆる“サードプレイス”。野球を通じて全く違う業種の人たちと交流したり、全然知らない人とも仲良くなれたりするのが楽しくて。今は高校を卒業したばかりの若い子たちとも一緒にプレーをしています。目が悪くなったり膝が痛くなったりして、ヒアルロン酸の注射を打ちながら、48歳の自分が18歳の子たちとスポーツを頑張ってます(笑)。当社のお店のスタッフと同様に、若い子たちからパワーをもらいますし、彼らの将来の話を聞いて親目線になったりすることもありますね。
それでも、野球だけでは足りないと思い始めて、先日息子がやっているバドミントンにも挑戦してみたんです。これがまた楽しくて。動体視力や俊敏性を鍛えられるので、自分にとって新しい刺激になっています。土曜日は野球、日曜日はバドミントンと、体を動かす週末を過ごしています。
仕事から完全に切り離された趣味を持つことで、気持ちがスッキリしますし、1週間のリフレッシュにもなっています。私にとって、こういう別の世界に身を置くことがとても大切なんです。こんなに動いていても痩せないのは食生活のせいだと思いますけど(笑)。
この業界で働く方、そしてこれからチャレンジされる方達へ
アパレル業界は、ファッションに関わるヒト、モノ、コト、ハコを通じて他者の人生に少しでも触れられることに醍醐味があるように思えます。誰かのターニングポイントに関われることは本当に貴重です。
好きな人との初デートに着ていく勝負服を一緒に選び、その後「うまくいきました!」とお礼の連絡をいただいたことがありました。
旦那様のネクタイ購入のお手伝いをしたことがキッカケで、奥様から反抗期の息子さんに対して「どう接したら良いか?」子育ての相談をいただいた時もありました。
こういったシーンで、お客様のニーズに応じて自分たちの知識や経験を提供できることは、この業界に身を置いている意味を強く感じる瞬間です。
今この業界で活躍する方にも、これからアパレル業界に入る方にも、こうした場面に遭遇することはあるでしょう。その貴重な瞬間に携われることに誇りや喜び、楽しさを感じてほしいなと思っています。
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PROFILE
安藤 賀一
1976年 東京都出身。
大学卒業後1999年にアルバイトとしてビームス二子玉川で勤務スタート。
2003年社員試験に合格しビームス梅田に転勤。
2006年から都内に戻り、内勤職としてアウトレット事業に長く従事。VMD、メンズMD、レディース商品ディレクター、SV、戦略担当、事業責任者、店舗運営管理部長を経て現職に。
ニックネームはあんちゃん。
好きな人との初デートに着ていく勝負服を一緒に選び、その後「うまくいきました!」とお礼の連絡をいただいたことがありました。
旦那様のネクタイ購入のお手伝いをしたことがキッカケで、奥様から反抗期の息子さんに対して「どう接したら良いか?」子育ての相談をいただいた時もありました。
こういったシーンで、お客様のニーズに応じて自分たちの知識や経験を提供できることは、この業界に身を置いている意味を強く感じる瞬間です。
今この業界で活躍する方にも、これからアパレル業界に入る方にも、こうした場面に遭遇することはあるでしょう。その貴重な瞬間に携われることに誇りや喜び、楽しさを感じてほしいなと思っています。
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PROFILE
安藤 賀一
1976年 東京都出身。
大学卒業後1999年にアルバイトとしてビームス二子玉川で勤務スタート。
2003年社員試験に合格しビームス梅田に転勤。
2006年から都内に戻り、内勤職としてアウトレット事業に長く従事。VMD、メンズMD、レディース商品ディレクター、SV、戦略担当、事業責任者、店舗運営管理部長を経て現職に。
ニックネームはあんちゃん。
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